遺産相続_02

親の死後、「親が遺した家をどうするか」という事について、親子での話し合いを行っておらず、なおかつ遺書もないとしたら、遺された子たちで話し合いを行うしかありません。

そこで揉めるのが、「簡単に分けられない」という事。

家はケーキのようにいくつかに等分して、それぞれが必要な分を持ち帰る、という訳にはいきません。

また、「家は自分が全て受け継ぐ」という意見の兄弟もいるかもしれません。

平等に分ける、といっても家の活用方法は様々あるので、

「親との思い出が詰まった家だから、売らずに遺しておこう」
「今すぐ売りに出し、現金化しよう」
「売るよりも、賃貸物件として収入を得よう」

等々…、様々な意見が出てくるものです。

さらに、他人ではなく兄弟間という事で、自己主張が強く互いに譲らないため、なかなか話し合いが進まなくなってしまう可能性もあります。

では、揉めずに円滑に話し合いを行い、家を分ける方法はあるのでしょうか?

家を分ける4つの方法と揉める要因

家は主に4つの方法で分けることが可能ですが、それぞれ揉める要因がありますので、ご紹介いたします。

1:現物分割

現物分割は、遺産分割の基本的な方法として最も多く活用されております。

これは、親が残した財産が家だけではなく預貯金などの現金もあるという場合、

「家を継ぐ者」「現金を受け取る者」

というように、それぞれが違う財産を受け取るという方法です。

揉める要因…受け取る財産の額に差が出る場合、揉める可能性があります。

2:換価分割

親が残した財産が家などの不動産のみの場合、家を売却してその金額を分割する方法です。

誰も住んでいない、住む予定のない家の遺産分割に適している方法ですが、親の遺産が現金は殆どなく、土地・家のみ、という場合が一番兄弟間で揉める原因となります。

揉める要因…まず「売るのか売らないのか」という部分で揉めます。最終的には「売る」方が勝つことが多いです。

3:代償分割

家を分割できない・分割したくない場合にお金で清算する方法です。

例えば兄弟間で「家は自分が受け継ぎたい」という者がいた場合、ほかの兄弟に金銭等を渡し解決を図ります。

揉める要因…金銭を渡される兄弟が金額に納得がいかず、揉める可能性があります。

4:共有分割

兄弟で受け継ぐ家を共有の名義で所有する方法です。

単純に兄弟2人で相続する場合は、半々の持ち分で所有することになりますが、
後々の相続で手続き等が複雑になるので、あまり良い分割方法とは言えません。

・揉める要因…後日どちらかが「売却したい」と思っても、兄弟間で同意を得られず揉める可能性があります。

この4つのうち、4:共有分割については、注意が必要です。

最近は「揉めたくないので一先ず兄弟間で等分に分ける為、共有の名義で登記を行い所有する」と気軽に考えてしまう方が増えています。

これは揉め事を先送りする事となるだけといえます。

例えば、後日共同所有者のひとりが「売りたい」と考えた場合、ほかの所有者全員と意見が一致しなければ売却はできません

さらに万が一、共同所有者のひとりが亡くなった場合はどうなるでしょうか?

通常は、亡くなった共同所有者の子孫が引き継ぎ相続するという事になりますが、共有する人間が増えるうえ、きちんと名義変更がなされるとはかぎりません。

いざ売却しようと思った際、「数十人の許可を得なければ手続きが出来ない」という事になてしまっている可能性もあります。

もしも、家等の不動産以外にも相続する財産があるのであれば、

親の家は長男が引き継ぎ、預貯金は次男が引き継ぐ、等の方法で遺産をそれぞれ相続する「1:現物分割」で分ける方が後々のトラブルはありません。

その際にも、受け取る財産に差が出ると揉めてしまう可能性があるので、注意と調整が必要かと思われます。

親の家を通してきょうだいの関係を見直す

親の死後、親の家・財産をめぐる兄弟間のトラブルを負の事例として、改めて兄弟の関係を見直してみましょう。

兄弟の関係性から、何が原因で関係を悪くするのかが見えてきます。

まず、「遺産相続への根本的な捉え方の違い」があるようです。

「長男」という事にこだわる、父権制的な考えを残す者と、平等を代表する民主主義的な考え方の者とではそもそもの考えが異なるので、それが兄弟間の気持ちのすれ違いを大きくしているかと思われます。

戦後70年が過ぎたとはいえ、跡取りが必須という「家督相続」を受け継ぐ考えは、現代の50・60歳代の方々には多くいらっしゃいます。

逆に、現代的な考えで「自分の権限・考えを主張して他の兄弟の意見に耳を貸さない」というような、
個人主義な考えの方も増えておりますので、こういった意思の相違が関係性を悪くしている可能性があります。

また、いくら兄弟といえども生前の親から受けた支援は平等ではないものです。

些細な事でも「不平等だ」と思ってしまい、ずっと恨めしく思っていて、「親の財産だけは絶対に自分が一番多くもらおう」という考えから、寄与分や特別受益を主張して取り分を譲らないという場合さえあります。

もともとの本性なのか、お金が人を変えてしまうのか、
いざ遺産相続の話し合いとなった際には、温厚と思っていた兄弟でさえどうなるかは予想がつきません。

しかし、一番の原因としては、「兄弟間に物理的にも精神的にも遠距離である」という事かと思います。

核家族・単独世代が多い近年、親・兄弟同士は離れて暮らすことが当たり前になりました。

卒業・就職などで実家を出ると、特別なことがない限りは実家に戻ることはありません。

兄弟はそれぞれの家庭で暮らし、それぞれが築いた家庭の色に染まります。

いくら兄弟といえど、本心を気軽に口に出せなくなってきますよね。

物理的な距離が遠ければ遠くなるほど、精神的な関係も遠くなってしまい、他人行儀になるのだと思います。

連絡が希薄な兄弟には、自分からアクションを起こす

親の遺産である家の事で兄弟間のトラブルを防ぐには、兄弟間の心の距離を埋めるのが一番の得策だと考えます。

心の距離を埋めるためには、物理的な距離から縮めるのが一番手っ取り早いです。

連絡が希薄になっている兄弟であれば、まずは手紙やメールで連絡を取ってみたり、地域の名産などを送ってみたり、

兄弟からの連絡を待つのではなく、自分から好意的に連絡を取る姿勢になることで、相手も次第にやり取りを返してくれるようになります。

また、家族・親族が転勤や結婚などで県外・海外に行ってしまい、なかなか連絡が取れなくなってしまった場合、

インターネット上のSNSなどを活用し、双方の状況や気軽な悩み相談などを行うのもいいですね。

近年はインターネットが発達したため、SNSなどを活用すれば

生活風景の写真に一言を添えて、気軽に送信することが可能となっております。

「インターネットなんて使用したこともないし、今更どうやったらいいかわからない」というような方も

使用方法を若い家族や子、孫に教わってはじめれば、またひとつ楽しみが増え、コミュニケーションの一環にもなりますよね。

こうして徐々に関わりが増えれば、それぞれの生活風景や状況が理解でき、

「相手の主要を尊重しよう」という気持ちが芽生えてきます。

もともと、同じ家で暮らしてきた兄弟ならなおさら、いい意味で「兄弟間の情」も思い出してくるのではないでしょうか?

この気持ちの土台が出来上がれば「遺産相続への根本的な捉え方の違い」の部分や、個人主義傾向の方の「自分の権限・考えを主張して他の兄弟の意見に耳を貸さない」という思考が和らぎ、

お互いの事を考えてしっかりと話し合いが出来るようになるのではないか、と思います。

親の家には2つの意味がある

親が遺す「家」には2通りの意味があります。

1:物理的な居住場所としての「家」

家族のかたちや生活習慣が変化すると、生活の基盤である「家」も次第に変化していきますので、
現代の人は徐々に昔のかたちの家には住まなくなり、親の「家」は生活基盤としての機能は薄まっていきます

その為、いつかは家をたたまなくてはいけないというのは、仕方のないことかと納得する方は多いのではないでしょうか。

2:抽象的な思い出・系譜としての「家」。

父と母が暮らしてきた経歴の背後には、祖父母の存在があり、曾祖父母やさらにその奥の親戚の存在があるように、先祖代々の家系があります。

つまり二つ目の意味として、抽象的な一族代々がつながる系譜としての「家」があります。

例えば、台所は母が早朝から深夜まで立って家事を行っていた思い出がありますし、

居間は家族が集う一家団らんの場として食卓を囲み、見るテレビの番組争いをした思い出、

狭い浴槽に家族みんなで入ったお風呂場や、靴が次第に増えていった玄関など、

この系譜としての「家」には、抽象的な思い出や記憶が蓄積されています。

家をたたむと、親の家に伝わる系譜や思い出も途絶えさせてしまう、という思いから

長男・長女の立場にいる方が、家を処分することにためらい、残しておきたいと考える場合が多いです。

ですが、そんな大切な思い出が詰まっている家を、長期間空き家にしてしまうというのも良いものではないですよね。

物理的な「家」をたたんだとしても、系譜も無くなるわけではありません。

大切なのは「引き継いでいこうと思う気持ち」です。

本当に引き継ぐ気持ちがあるのであれば、自分の子孫にも「記憶」として引き継いでいけるものです。

具体的には、

「家系図を作成してルーツをたどる」
「家に残っている古文書等の記録を解読する」
「戸籍・除籍謄本を取得する」

という方法で先祖の原点をうかがい知ることが出来ます。

また、最近は家系図作成サービスや、先祖調査サービスを行っている企業も存在します。

各地域の文書館や図書館で、古文書の解読講座などを行っているところもありますし、
インターネット上でも解読方法などは調べられるようになってきました。

このように、家を処分してしまっても、物理的な「家」は無くなりますが、
親や先祖の系譜としての「家」は代々残っていきますので、安心して家をどうしていくかの結論を出していきましょう。

 

著者:坂野麻衣子
坂野麻衣子_イメージ図
上智大学卒業後、大手電機メーカーに就職し10年以上勤務。結婚と同時に職場を退職し、余った時間を有効活用してライター業務を行う。大手キュレーションメディアで執筆多数ある人気ライター。自身の経験から「マンション売却」に関連する記事も多数投稿しています。