マンション売却を考えている方の中から「売る前にリフォームをするべきでしょうか?」という質問をかなり多く受けます。

マンション売却について書いた記事や書籍にも様々な意見が述べられていますし、プロのリノベーション業者は買い取ったマンションをリフォームして販売するスタイルです。

しかも多くがオープンルーム(売り出し)一回で成約しています。

では、やはりマンションを売却する場合、前もってリフォームしておくべきなのでしょうか?

実際のマンション販売実例や買主心理などを交えてお話します。

結論はズバリ!「売主はリフォームする必要はありません」!

ハッキリと申し上げましょう。

マンション売却時、売主によるリフォームをする必要がありません。

「汚れたビニールクロスのままで売れるのか?」
「喫煙者で黄ばみがひどいけど、それでリフォームはし
なくていい?」

「リノベーション業者はリフォームしたからすぐ売れるのではないか?」

売主が疑問に思うことは全くもっともです。

しかし、売買は文字通り「売り手」と「買い手」が価格や条件面で合意して成立するものです。

かつ、売買市場に関する限り、どうしても代金を払う側の「買主目線」が基調になる傾向が強いのです。

そこで「なぜ売主のリフォームは必要とされないのか?」その理由を購入者の目線を交えて説明します。

そのリフォームは買主の嗜好を反映したものですか?


まず、最初に意識して下さい。

仮に売り出すためにリフォームをしたとします。

無難に白のオーソドックスなビニールクロスに張り替え、フローリングも痛みや家具の痕や傷が目立つので、これも一般的な木目調に張り替え、エアコンも高価ではないものの、5万円前後の新品に交換してあります。

売主からすると

「この方が買主の印象も良くなって高めに売れるかもしれない」

そう自信を持つかもしれません。

しかし、そのリフォームは買主の意向を反映しているでしょうか?

そもそも買主が付いていない段階ではわからないはずです。

問題はそこです!

中古マンションの買主は通常、購入した中古マンションを自分の思い通りにリフォームしようと思っています。

クロスの色味だけでなく、場合により間仕切りを入れて間取り変更まで考えているかもしれません。

汚れて黄ばんだ状態よりも、新しく張り替えられたクロスの方が印象も良いことは間違いありません。

しかし、買主は何千万ものお金を現金又は住宅ローンを使ってマンションを購入する以上妥協はしてくれません

場合によっては折角売主負担で張り替えたクロスを剥がして新たにリフォームし直すこともあり得ます。

このように買主の意向を反映していない売主のリフォームはあまり評価して貰えないのが現実です。

買主はあらかじめリフォーム代金の値引交渉を考えている


私が不動産業者社長だったとき、リフォーム業者と業務提携の話を進めたことがあります。

というのも、リフォーム業者のショールームで「夢のマイホーム」の姿を図面やパースでイメージ化した顧客が

「中古マンションを探して欲しい」と要望するため、宅建業免許を持つ私に協力を持ちかけてきたわけです。

こうした買主はリフォームにかける予算が膨らんでしまっているので、

提案されたプラン通りだと購入価格を相当値引かないとマンション購入ができません。

その結果、購入するマンションの予算を落とすか、それともリフォームする箇所を減らすなど、予算を下げるしかありません。

このように、中古マンション売買市場には、リフォーム業者のショールームから夢を膨らませた買主もかなり増えているのです。

私が仲介したマンション購入客の多くは、購入申し込み後になって

「あのままだと汚れているから、リフォームがしたい」
「安くリフォームしてくれる業者を紹介してほしい」

何度も相談を受け、紹介してきました。

リフォーム業者のショールームで完全なイメージ図を作っている買主だけでなく、

一般の買主も申し込みした後になって最低限でもリフォームを希望するものなのです。

買主のほとんどが引き渡し後のリフォームを希望し、予算を立てています。

マンションが汚れていれば、それを口実に「リフォーム費用がかかるので値引きをお願いしたい」と「指し値=価格交渉」をしてきます。

これを売主の立場から考えた場合、例えマンションの専有部分が汚れていたとしても、買主は値引き交渉をしてくれるのです。

売主の方から100万、150万の費用で最低限のリフォームをしても、

追加リフォームや完全に自分仕様にするリフォームを考えた値引き交渉が無くなるわけではありません。

従って売主が先にリフォームすると、逆に損をすることもあり得ることを知っておくべきです。

リノベーション業者の買取り転売方法が売主の「お手本」になる


「リノベーション」という単語が浸透したのもここ15年前後ではないでしょうか。

昔は単に「買い取り転売」と業者も呼んでいましたが、略して「リノベ」と言われることもある位です。

「リノベーション業者」はマンションを買い取り、リフォーム後、販売しています。

商売ですから「利ざや」が売価に乗っている事は言うまでもありません。

では、業者が買主の要望通りでもないリフォームで売れるのに、なぜ売主自らリフォームしない方がいいのか?

そこが買い取り転売を「事業」として行う「リノベーション業者」と個人との差です。

「リノベーション業者」がマンションを買い取る場合、一般人の成約水準で購入していません。

買い取った後、直ちに費用を投じてリフォームを施し、再度「売主」として販売するため、当然リフォームに掛ける費用と利ざや分を算定して安く購入します。

あくまで販売する在庫を仕入れているのです。

また「リノベーション業者」の再販価格は絶妙な値付がされています。

つまり、そのマンションが売れるであろう「想定売却価格」よりも少し高めになっているのです。

業者は事業融資で素材となるマンションを仕入れているため、長期間売れ残った場合、金利負担が販売計画の収支をどんどん圧迫していきます。

ゆえに長期在庫は許されません。

なるべく早く売らないと現金化が遅くなり、次の物件を仕入れることができません。

このため「リノベーション業者」は極端な「チャレンジ価格」を提示しませんし、引き合いがなければすぐ経営判断で価格を下げます。

それでも売れなければ、赤字になる前にトントンでも売り切ってしまいます。

業者の値付けや価格変更などの販売活動は一般の売主が手本にして欲しい売り方です。

ここで考えてみてください。

プロである「リノベーション業者」が買主としても優秀であるように、一般の買主も必ずリフォーム費用を意識しています。

例えマンション内部が生活臭の漂う匂いや汚れがあったとしても、

買主は物件を内見するときにリフォーム業者に同行してもらい、すぐ見積り依頼をしています。

買主はスマホ等で撮影した内部写真と間取り図面を前に、

リフォーム業者と「ここを直そう」「間取りをこう変更したい」などと打ち合わせを行い、

夢のマイホームをどう完成させるか夢を膨らませていきます。

その頭に汚れた現況はなくなっていると言ってもいいでしょう。

従って売主は買主にリフォームを好きに任せる代わりに、費用分を価格交渉時に買主と話し合う方が合理的だと言えます。

売主は買主にリフォームしてもらうのが合理的な考え方である


いかがだったでしょうか?

中古マンション売買市場では、買主がリフォーム費用を考慮した「指し値=価格交渉」をしてきますので、売主が費用負担をしたリフォームが無駄になる事もあり得ます。

そこは買主とは費用部分を価格で交渉し合うことが合理的であり、先に費用を負担せずに済むと思います。

またリノベーション業者の仕入れと再販活動はある意味、プロの売買テクニックとして「お手本」にすべきだと思います。

なお、販売時に売主が行ったリフォームで部屋が綺麗に見えることは印象も良く、効果はあると私も思いますが、

気に入ったとしてもそのまま使うとは限らないのが買主の心理であることは忘れないで下さい。

著者:神林勝利
不動産鑑定士_神林さん
不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。