リノベーションをしたいと思っている方が最近増えています。私も不動産業者の社長だった時、ショールームにマンション購入希望者が殺到していたリフォーム業者から「仲介をお願いできないか」と業務提携を持ち掛けられたことがあります。

そこで今回は中古物件購入者の方にリノベーションすることのメリットとデメリットをお話します。

「リノベーション」と「リフォーム」の違いは何か

私もいつの間にか浸透した「リノベーション」という用語を知りたくなってWikipediaを見てみました。

このページに「メリット」「デメリット」までが今日現在しっかり描かれています。
そこでWikipediaの文章から引用すると以下のような区別になっています。

リノベーションとリフォームは混同されやすい言葉である。

どちらも住宅に手を加える点では同じだが、厳密にはその目的の部分で次のような違いがある。

リフォームは「老朽化した建物を建築当初の性能に戻すこと」を指し、元に戻すための修復の意味合いが強い。古くなったキッチンを新しいものに変えることや、汚れた壁紙を張り替えるなどの小規模な工事は「リフォーム」に分類される。

一方リノベーションは、修復だけでなく「用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりする」行為も含むため、より良く作り替えるという目的が含まれている。工事の規模も、間取りの変更を伴うような大規模なものを「リノベーション」と指すことが多い。

すると中古物件購入者が入居前、最低限行うであろうクロスの貼り換え、キッチンユニットの交換、畳替え(カーペット交換)などは「リフォーム」になるようですね。

「リノベーション」は2DKの間取りをカッコいい1LDKに間取り変更し、段差のある古い年代の作りをバリアフリーに変更するようになると「リノベーション」に分類されるようです。

予備知識として「リフォーム」と「リノベーション」の区別は知っておいて損はないでしょう。

リノベーションにかかる費用はどの程度かかるものか?


最低限の「リフォーム」でクロス貼り換えや畳替えだけでも業者によりけりとはいえ約50万円程度の費用負担はかかるのが普通ですから、間取り変更やバリアフリーなど、費用(コスト)を掛けようと思えばいくらでも掛けられるのが「リノベーション」です。

業者のHPを引用して比較するのは控えますが、私が不動産業者社長時代、業務提携を考えた業者さんの所に来ていたお客様は500万、600万程度の予算で理想通りのマイホームを描いていました。

中古マンションも昭和50年代中旬までの新耐震基準以前の間取りは2DKや3DKが多かったので、間取り変更で2DKを1LDKに、3DKを2LDKに変更するプランは良く見た記憶があります。

「リフォーム」はベースとなるマンションの老朽化部分を「修繕」するレベルですが、「リノベーション」は間取り・床材や水回りなど大規模な変更を伴うため費用もある意味で「青天井」です。

まれに1,000万も掛けた話を耳にしますが個人のマイホームでそこまでやるのは芸能人など個性が強く自分のこだわりを経済的にも実現できる限られた需要者に限られると思います。

ノベーションにおけるメリットは何か


Wikipediaにも記述がありますが、不動産屋の目から見た順に纏めてみます。

1. 新築よりも購入費用を抑えられる

リノベーション費用がどの位になるのかにもよりますが、新築価格を飛び越えるケースはあまりないと思います。

逆にリノベーション金額から逆算して購入する中古物件の価格を逆算して探す需要者がほとんどです。

いずれにせよ新築マンションよりも中古物件をリノベーションする方が購入費用を抑えられます。

2.新築マンションがない場所でも中古なら存在し得る

2017年6月現在、都心三区を中心に需要と建築が進み、新築マンション用地不足が顕在化しています。

つまり希望する立地に新築が建つのを待っていても建築されるかわかりません。

これに対し、中古マンションは既に人気エリアに建っていたりするので新築と比べて選択肢が広がります

またモデルルームでパースなどイメージ図でしか見えない「青田=建築前の更地」の新築と違い中古物件は既に建っているので外観や日当たりなどを実際に目で見て確認できるメリットもあります。

3.自分の好み通りに間取りや内装などを選択できる

新築マンションや建売も最近リノベーションとの競合で、間取りや内装をお好みにアレンジできるようにサービスを変更しているようですが、如何せん限界があります。

その点リノベーションはマンションの場合、共用部分に影響を与えない管理規約の範囲内で専有部分を思い通りに作り込むことが可能です。

クロスや床材の材質、色味、また健康素材など、こだわりのある方は徹底的に作り込みます。もちろん見合う費用がかかることは言うまでもないことです。

4.購入時点と比べてリノベーション後は資産価値が増加する

単純に中古物件に費用を投下してリノベーションしたのだから価値があがるのは当然と誰もが考えるはずです。

確かに不動産鑑定の世界でも「資本的支出」といって耐用年数を超過するのが間近の築後40年のビルに一億費用を掛け大がかりなリニューアル工事をした場合、耐用年数を「若返った」分だけ長く見る考え方が評価方法に取り入れられました。

しかし中古のリノベーションは「専有部分」のみですから、一棟の建物全体が新しくなりません。

ゆえに同じ一棟の建物内部での比較では価格的に上位になりますが、他のマンションとも比較される中古物件の売買市場ではあまり過剰な金額を投下しても価格にそのまま反映されないことも十分留意しなければなりません。

リノベーションにおけるデメリットとは

1.購入後入居するまでに時間を要する

新築物件も契約後完成を待つまで時間を要しますが、中古物件のリノベーションは購入後決済が済み引き渡し後に綿密な業者を伴った内見で工事個所を打ち合わせし、設計に2から3か月、工事に1~2か月前後の期間を要します。

工事開始を早めるため売主にお願いして引き渡し前に内見依頼を依頼することもありますが、基本的には引き渡し後所有権移転が済まないと「他人の物件」のままです。

すると購入後工事が完成し入居するまでの間、賃貸住まいであればじっくり腰を落ち着けられますが、買い替えだった場合「仮住まい」を探す必要とその賃料負担という別の費用(コスト)がかかってしまいます。

2.新耐震基準前の古いマンションは検査が必要な場合もある

耐震設計に関する事項は基本的に一戸建住宅のリノベーションで問題となる事項ですが、

中古マンションの場合、1981年の新耐震設計基準以前に建てられたマンションは耐震性が現在の基準を満たしていないため検査を必要とするなど想定外の必要負担を強いられるケースもありえます。

3.管理規約に定められた範囲を超したリノベーションは不可

マンションは一棟の建物にある専有部分を所有権で取得します。

バルコニーや戸境壁は共用部分にあたるため変更することはできません。こうした決まりは管理規約にも定められています。

例えば玄関ドアはどうか?
実はこれ、「共用部分」です。

許可なく勝手に玄関ドアを交換することはできません。他にもバルコニーは共用部分ですが、窓のサッシはどうか?これも共用部分にあたるのです。意外だったかもしれませんね。

また床もフローリング材の材質などが「デシベル」という音の数値で遮音性能が規定されている事が通常になっています。

見てくれや好みだけで床材を選ぶことができません。

このように何でも好き勝手に思い通りにはできないこともデメリットの一つとして認識すべき事項です。

4.過剰なリノベーションは売却時にマイナスとなることに注意

メリットの方で少し触れましたが、リノベーションを過剰に施した中古物件は売却時に高く売れるとは限りませんし、それだけでなく、個性的過ぎると逆に印象を悪くするケースが多いのです。

むかし「いまだハウジング」というバラエティー番組がありましたが、私は不動産鑑定士として番組制作会社まで打ち合わせに行ったことがあります。

内容は芸能人が持っている別荘を、いとうまいこさんが現金を持って「買う」「買わない」をジャッジするというシナリオで、最近似ているパターンを的場浩司さんが別番組でやっています。

イメージしてください。

マンションではあり得ませんが、小錦さんの別荘は稽古用と同じ位の太い柱がある独特の作りでしたし、他の芸能人もリビングが50畳あるとか、天井高が吹き抜けでチャペル並だとか、凄く個性と個人的な趣味が入っています。

物件をマンションに戻しますが、仮に1,200万掛けてリノベーションした物件があるとします。

売主は「1,200円の費用を掛けてリノベーションしました」と金額をアピールする方が多い!ところが買主にも「自分の好み」があります。

購入後同様に自分の好きな内装にリノベーションするかもしれないのです。

撤去が難しい造作が付いていたりすれば逆に値引き交渉すらされる危険があります。

このように過剰なリノベーションは将来売却する時掛った費用の分まで高く売れることはほとんどないこと、奇抜なデザインは値引き交渉の理由とされるなど売却時に不利となることを知っておかねばなりません。

リノベーションはメリット・デメリット混在


今回はリノベーションとリフォームと違いについてお話しましたが、全てが思い通りになるわけではないこと、メリット・デメリットが混在することを良く認識して過剰なリノベーションは控えた方が無難です。

著者:神林勝利
不動産鑑定士_神林さん
不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。