マンションや土地戸建を売却するとき「最後の砦」として控えているのが「リノベーション業者」や「建売業者」です。

東京23区は無論のこと、地方都市でもこうした買取り転売を目的として物件を買ってくれる不動産業者が存在しています。

今回は売却時に土地戸建やマンションを不動産会社が買い取る場合のメリットとデメリットについて纏めてみましたので、どうぞご覧下さい。

「買い取り業者」とはどのような業種があるのか?

不動産を買い取って転売する業者はそれぞれ買い取る物件種別を限定している場合が標準的です。

1. マンションを買い取ってリフォーム後売却する「リノベーション業者」
2. 戸建住宅を競売で仕入れ、リフォーム後売却する「リノベーション業者」(以前の競売業者がこれに該当)
3. 大規模な土地を仕入れ、分割後「建築条件付売地」又は一戸建住宅を建築後販売する「建売業者」
4. 「3」よりも大規模で容積率の高い土地を仕入れ、土地上に分譲マンションを建築・分譲する「デベロッパー」

大まかに4つに分類しましたが、1~4までを全てこなす業者もいるので厳密な分類ではありません。

「買い取り業者」がやろうとすることは何か?

不動産を買い取る業者は、買い取った物件を自ら所有するために買うのではありません。

利ざやを乗せて転売するために「仕入れて」いるのです。

現金で購入するケースもあれば事業用融資を受けて購入するケースもあります。

私が扱った物件の中には3つの不動産会社が共同出資で購入した建売用地もありました。

いずれのケースでも「買い取り業者」はあくまでも自らの「商品」を販売するための「仕入れ」で不動産を買っています。

「利は仕入れにあり」の言葉通り、「仕入れ」である以上、商品として再び売却するときの価格(再販価格)を意識し、なるべく安く仕入れることは当然です。

「買い取り業者」は常に仕入れ続け、常に売らないと生き残れない

「買取り業者」の宿命とも言えますが、不動産以外の業種では当然の販売サイクルである

「仕入れ」→「販売」→「資金回収」→「融資金返済」→「再び借り入れ」→「再び仕入れ」

を回し続けなければ生き残れません。

従って在庫物件の販売が完了している業者は次の商品を作る必要があるため、仕入れに積極的となり、かつ、多少の高値でも購入しようと動きます。

反対に、在庫物件の販売が上手くいかず「ダブ付いている」場合、資金回収のメドが立たないため仕入れを控えます。しかし、余力がある場合のみ「格安の条件」であれば仕入れるでしょう。

「買取り業者」が買う目的はできる限り「安く」仕入れることにある

いままで説明してきたように、「買い取り業者」は購入するマンションや土地・戸建を自ら保有する目的で買うのではなく、利ざやを乗せて再売却するベースとして購入しますので、当然、市場の価格水準よりも安く買わなければなりません。

しかも「できるだけ安く」です。

この業者心理を知っておくことが非常に大切だと言えます。

それでは「買い取り業者」がマンションを買い取る場合におけるメリットとデメリットをお話します。

「買い取り業者」がマンション・土地戸建を買い取る場合のメリット

メリット1:買い取り業者は購入時期を選ばない=いつでも買ってくれる

「買い取り業者」は自らの商品を作るための「仕入れ」で買うのですから、基本的に一般のエンドユーザーと違い「いつでも」買います

エンドユーザーの多くは自ら居住するためのマイホームとして購入するため、転勤・子供の新入学などに合わせた1月後半から3月末頃までと、9月から11月末頃に需要が集中するため、時期を外すと需要者が少なくなるため売り難くなります。

でも買い取り業者はこのエンドユーザーが購入する時期の最中はもちろん、需要が少ない時期でも購入します。

※但し業者の懐具合によって購入を控えるケースもありますので、デメリットの方で紹介します。

メリット2:購入の決断が早い

「買い取り業者」は不動産の購入と売却のプロです。

彼らの売却時の値付け(=価格設定)はエンドユーザーも大いに参考とするべき絶妙の価格設定がなされているのです。

購入時の仕入れ価格も首都圏内であればパソコンでデーターを見なくても売れ筋の価格帯やトレンドも把握しています。

それゆえ物件情報を入手すれば、

あとは購入・売却時の仲介手数料、契約時印紙税額、固定資産税等の清算金額など契約時費用を算出し、

さらに現況を見てリフォーム費用を算出すれば仕入れ可能額はすぐ出てきます。

早ければその場で価格を出せる場合もありますし、遅くとも1日、2日あれば結論が出ます

購入の決断が早い理由には同業者との仕入れ競争も背景にあります。モタモタ考えているうちに他業者に購入されてしまいますので。

メリット3:部屋が汚くてもそのまま購入してくれる

「買い取り業者」はプロですから中古マンションや一戸建の内部が汚れていることは当然と思っています

エンドユーザー向けの売却を考えている方に「リフォームしないと売れないのでは?」と良く質問されますが、「買い取り業者」に関する限り、その必要は全くありません。

リフォームは業者が売れるように全部自分達で行いますので、部屋が汚かろうが、タバコ臭がヒドかろうが関係なく購入してくれます。

「現況有姿」という用語を不動産取引では良く使いますが、正に「あるがまま」の「現況有姿」ですぐ売れます

メリット4:事故物件であっても購入してくれる

通常のエンドユーザーなら購入を躊躇する物件の一つが「事故物件」でしょう。

事故物件公示サイト「大島てる」は知る人ぞ知る事故物件の場所や事件内容がGoogle Mapに記載されています。
http://www.oshimaland.co.jp/

登録されてしまった所有権者が掲載取り消しを求めて争うなど話題のサイトですが、

いずれにせよ殺人事件や自殺、火災による死亡事故など、物件内で死亡事故があった場合、

相手がエンドユーザーであれば尚更重要事項説明書の「告知事項」として説明しなければなりません

隠して売った場合、後で「その事がわかっていたら購入しなかった」と裁判沙汰になります。

告知義務は相手がプロの業者であっても同じことですが、重要な事は「買い取り業者」は事故物件でも購入してくれるという事実です。

私もサラリーマン時代は支店内で殺人事件2件、火災による死亡事故1件と、3件の「事故物件」を扱いましたが、いずれも「買い取り業者」が購入しました。

メリット5:ローン特約によるキャンセルの心配がない

通常のエンドユーザーはマイホームを購入する際住宅ローンを利用することがほとんどです。

現金購入するのは相続後に纏まったお金を手にした方や超高額所得者、売れっ子芸能人位なもの。

この場合「ローン特約」「ローン条項」と呼ばれる白紙解約の特約が契約に盛り込まれます

つまり、買主が住宅ローンを金融機関に申し込んだ結果、審査に落ちて融資を否決された場合は、

受領した手付金等を返済して違約金も発生せずに契約を白紙にして解除するという特約条項です。

売主からすれば、ローン条項の期限日までは白紙での契約解除があり得るため、次のアクションに移れません。

この点、「買い取り業者」は事業者なので、「ローン特約」を付けることはありません

資金繰りが調わなければ購入申し込みをすることはありませんので、「確実に買ってくれる」安心感があります。

※もっとも業者が倒産するリスクは皆無でないことは社会通念上当然です。

「買い取り業者」がマンション・土地戸建を買い取る場合のデメリット

デメリット1:購入金額がエンドユーザー購入価格よりも安くなる

「買い取り業者」は「仕入れ」のために購入しますから、エンドユーザーの買値と同じ価格水準では購入しません

販売価格(再販価格)がエンドの水準ですから、先程説明したように、購入時・売却時の諸費用とリフォーム代、

そして事業者としての利益(利ざや)を引いた価格が購入価格になります

何割違うのか?と言われると業者によっても異なりますし、購入物件によっても違ってきますが、私が見てきた限りで言うと、

エンド相場の60%前後がベースになろうかと思います。

例えプロでも事故物件は更に安く買う必要がありますし、売れ筋の物件であれば多少高目でも他業者に買われる前に押さえることもあります。

そうした状況によって購入価格は前後することになります。

デメリット2:業者の懐具合によっては買い控えもありうる

先程「買い取り業者」はいつでも買ってくれるとお話しましたが、これが業者の懐具合に影響されることがあるのです。

例えばA業者は販売物件がなかなか捌けず、売れ残っている状態です。

すると投下資金の回収ができませんから次の仕入れを控えるようになります。

またB業者は積極的に仕入れ捲って、販売前の仕入れ物件がパンパンです。

この場合は文字通り「お腹いっぱい」の状況なので、やはり仕入れを控えます。

この二社に共通しているのが、こうした状態のとき、無理してでも買う場合、更に安く買わないといけません。

「お腹いっぱい」なのに「食べてくれ」と言うことを考えてみるとわかりますね。

まとめ

いかがでしたか?

今回はマンションや一戸建を不動産業者が買い取る場合のメリット・デメリットについて主なものを纏めてみました。

まだこの他にもありますが、「買い取り業者」は購入の決断が早く「ローン特約」での白紙解約がないこと、

汚れていても事故物件でも買ってくれる替わりに、購入金額はエンド相場よりも安くなること、

懐具合によっては更に安い購入価格を提示されることもありわけです。

首都圏の不動産全般に言える鉄則は「価格次第で絶対に売れる」ということです。その「押さえ」とも言う存在が「買い取り業者」なのです。

著者:神林勝利
不動産鑑定士_神林さん
不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。