投資用のマンションの売却価格は、一般のマイホームとしての売却価格と全く異なる事をご存知ですか?

ご存知ないとしたら不動産投資について明らかな知識不足です。

特に投資用ワンルームマンションを購入する人は不動産投資の初心者が多いので購入時に「出口戦略」を全く教えられていない方も多いと思います。

そこで今回は投資用のマンションを売却する場合の注意点をいくつか纏めてご紹介しましょう。

投資用マンションの売却価格は「利回り」からの逆算で決まる


マイホームは自分で住むために買う不動産です。

自分で使うことから不動産業界人は「実需」と呼んだりします。

私達不動産鑑定士は「自用の区分所有建物及びその敷地」と分類します。

言葉の通り「自分で使う」物件ということです。

これに対し、投資目的の不動産はマンションにせよ戸建、アパート・マンション一棟にせよ、自分で使う事ができません。

空き部屋がない限り借主が部屋に入居中で借地借家法という法律で守られています。

そもそも投資用物件を売却する場合、購入者はどんな方でしょうか?
当然、同じように投資目的で購入する不動産投資家が購入するのが通常です。

投資目的であれば着目するのは対象不動産の収益力、特に「利回り」でしょう。

「利回り」について詳しく説明すると不動産投資のイロハまで話が広がってしまうので、ここでは細かい話を省略しますが、

皆さんが不動産投資物件売却情報のトップ2である


「楽待」「健美家」などや、大手不動産業者の投資物件紹介サイトに掲載されている「利回り」は「表面利回り」が表示されています。

「表面利回り」とは毎月の賃料月額を12倍して年額を計算し、単純に物件の売却価格で除した(割った)パーセンテージです。

例えば毎月の賃料が85,000円の中古ワンルームマンションが2,800万円で売られていた場合の表面利回りは

(85,000円×12か月)÷ 2,800万円 = 0.0364 (3.64%) 

となります。

私達不動産鑑定士が投資用のマンション(「貸家の区分所有建物及びその敷地」と分類します)を鑑定評価する場合、賃貸経営に要する費用を考慮していない表面利回りを使いません。

またプロの不動産投資家も表面(「グロス」)と「ネット」の利回りを完全に区別しています。

今回は不動産投資の説明ではないので結論だけ説明しますが、

仮に上記の例で、年間の固定資産税・都市計画税などの公租公課、管理費・修繕積立金の年額、共益費など賃貸経営に必要な年間総費用が仮に85万円かかるとすると、「ネット」利回りは

{(85,000円×12か月)-60万円 } ÷ 2,800万円 = 0.015 (1.5%)

となります。(※減価償却費はここでは長くなるため省略して説明します)

「3.64%と書いてあるのに本当は1.5%なんて不動産屋は詐欺じゃないの?」

そう、文句も言いたくなるでしょうが、「ネット」利回りや「純収益」という概念は不動産投資を勉強しない限り分からなくて当然なのです

それゆえ分かりやすい計算で「目安」になるのが「表面利回り」だと認識した方がいいと思います。

さて、話を売却に戻します。

投資用不動産を売却しようとするとき、例え同じ一棟の建物内に成約事例があったとしても比較論で査定することはできませんし、無意味です。

購入者は投資家ですから「この不動産を購入するために資本投下した場合、いくらで回せるのか?」という目線でしか見てくれません。

一般のマイホームとは全く異なる想定売却価格になります。

特にワンルームマンションは基本的に投資向けに作ってある物件ですが、一般の2LDK、3LDK以上のファミリータイプは投資用に作った物件はほぼないはずです。

「分譲賃貸」と呼ぶ「分譲マンション」を「賃貸」している物件のうち、ファミリータイプはほぼ間違いなく投資用物件の利回りがかなり低くなるため、実需のマイホーム向けの売却価格水準より極端に低い価格になることが予想できます。

こうした基本的事項を理解していない方は「安くなった」と認識してしまうのです。

投資用マンションを購入する買主は物件を見る目が厳しい

投資用マンションを購入する買主は「不動産投資家」の方です。

初心者の方でも今私が書いているような不動産投資の記事や書店の本を購入し、セミナーに通って勉強しているでしょう。

ましてベテランで何物件も所有している方は文字としての理屈だけでなく、経験値もあるので物件を見る目は更に厳しくなります。

つまり、マイホームの買主と違い、部屋が綺麗だとか、外観が素敵だとか、見た目で選ぶ人はほぼ皆無なのが投資用不動産の売買市場です。

外観がいくら綺麗でも設備はどうか?
管理形態は常駐、日勤、巡回か?
修繕積立金・管理費はいくらか?
大規模修繕計画はどうなっているのか?

などなど・・・

買主が投資物件を長期保有前提で賃貸するわけですから、投資期間が10年とすれば、

その間にどのようなリスクがあるのか?
お金はいくらかかりそうか?

など、長期にわたる費用負担の発生なども徹底的に調査しようとします。

出ていく方(支出)よりも重要視するのが

「一度退去した後、入居者が埋まるか?」
「埋まるとしても賃料は現状よりも下がるのか?」

など「収入」(=インカム)に関することを近隣の賃貸需要や家賃相場を調べて検討するはずです。

これらのことを全然考えず「どんぶり勘定」で購入する投資家もいるかもしれませんが、ほぼ「いない」と考えて間違いありません。

あなたがアパートローンという住宅ローンよりも高い金利で融資を調達し、投資用のマンションを購入することを考えて見てください。

「失敗しました」では済まない大金を投入するのです。

このように投資用マンションを売却するときの買主は、物件を見る目が半端でなく厳しいことを知って下さい。

高い価格で突っ張ってみても利回りが合わなければ見向きもされない

マイホーム用のマンション売却では「想定売却価格よりも少し高めに価格設定すべき」と私はアドバイスをしていますが、投資用マンションの場合は全て「利回り」ありきでしか判断されません

物件価格が高ければ利回りが低くなりますし、安ければ利回りが上がります。

(この「上がる」「下がる」も厳密な説明は省略して簡単に説明します)

売主がいくら価格を上げて突っ張ってみたところで「儲からない」ことが利回りに現れてしまいます。
当然ですが売れません。

このように投資用マンションを売却する場合、価格は最初に説明した通り「利回り」からの逆算でしか評価されないため高値で売却しようとしても結局、物件に見合う利回りになる価格へ落ち着いてしまうのです。

買主は購入時にもう「売る」ことを考えて検討をしている

不動産投資家は投資用不動産を一生所有し続けることを考えていません。

それぞれの考え方によりますが、一定の期間(投資期間)を10年と決めたら、10年後に投資用不動産を売却して得る利益(=キャピタルゲイン)を得ることを考えます。このことを「出口戦略」と呼びます。

つまり投資用マンションの購入者は、購入する時点でもう売る事を考えて動くのです。

一番は「投資期間終了時に売れるのか?」であり、次に「どの位価格が目減りするのか?」を気にします。

マイホームを購入する人はそこまで先を考えたりしないはずです。

このように、投資用マンションを購入する不動産投資家は、投資期間終了後に得られる売却利益を見越した「出口戦略」まで考えて購入物件を検討しているのです。

空室時のリフォームは売却代金を上げることに直結しない

投資用マンションが空室になった場合、リフォームをすれば高く売れると思いますか?

残念ながら、300万をかけてリフォームしても、その効果が売却価格に直結するとは限りません。もっと突っ込んだ言い方をすると「リフォームしても費用が無駄になるリスクの方が高い」ということです。

これも買主心理を考えて見て下さい。

不動産投資家は「利回り」で物件を判断することはお話しました。

「利回り」を図るとき入居者がいた場合は実際に徴収している「実額賃料」を、空室の場合、周辺の成約・募集賃料と売却物件とを比較して査定した想定賃料で計算します。

このとき大規模なリノベーションを行ったとしても賃料が9.5万のワンルームを12.5万で貸せるようになるかというと、そこまでの大幅アップは望めないはずです。(※もちろん物件によってはあり得ますが)

すると「利回り」はそれ程良くならないため、売却価格が下がることはなくとも、300万掛けたから300万以上売却価格がアップすることはありません。

「綺麗にした方が良い」

その考え方は間違っていませんし、否定もしません。

でも、ある意味掛けたリフォーム代の大部分を購入者である不動産投資家に「ごっつあんです」と持って行かれる割合が高く、お勧めはできません。

今回は投資用マンションを売却する場合の注意点をいくつか纏めてみました。

これらは不動産投資を説明する記事で詳しく説明させて頂きますが、マイホームの売却とは違って「利回り」で価格を判断されること、相手は業者でなくとも業者並ということを強く認識するべきです。

著者:神林勝利
不動産鑑定士_神林さん
不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。