東京オリンピックを前に都心の不動産市場は活況を呈しています。

この時期、「不動産投資を始めてみようか?」と思っている方は多いのではないでしょうか。

そこで不動産投資の初心者に向け、知っておかなければならない重要な真実を纏めましたので、初めて不動産投資を行う場合の参考にして下さい。

不動産投資だからこそ「不動産」を知らねばならない

不動産を知ることが失敗しないためにも重要

不動産投資とは、文字通り「不動産」に投資するのですから、投資対象の「不動産」について理解しないまま投資すると失敗します。

株式投資やFX等とは違い、不動産は賃貸から得られる収入「インカム」と運用にかかる費用「アウトプット」の双方を把握した上でキャッシュフローを理解しなければなりません。その他、様々な「リスク」を知り、対策を立てる必要があります。

不動産投資に「絶対儲かる」オイシイ話はない

不動産投資も様々な投資方法で本も市販されていますし、ネット上も情報が氾濫しています。

ここで特に注意して頂きたいことは、「表面利回り」のパーセンテージと「家賃保証」です。

投資用不動産を自ら販売又は仲介する業者は、物件を紹介するとき「表面利回り」を物件概要書に書いています。

「表面利回り」とは、月額賃料を12倍して年額とし、単純に物件価格で割った数値です。

例えば仮に一室の月額賃料7万円で10部屋のワンルームタイプの一棟マンションがあるとすれば

7万円×10部屋=70万円(月額)×12か月(年額)=840万円

物件価格が1億円とすれば
740万円÷1億円=0.074となり、表面利回りは7.4%です。

しかも賃料が「想定賃料」で書かれている場合がほとんどです。高額の「想定賃料」を前提とした利回りは正しい物件の収益力を表していないのです。

業者の提示する「表面利回り」「想定賃料」を鵜呑みにすると大失敗します。

家賃保証という一見安心を装った大きな罠


ワンルーム投資、アパート一棟に多い「家賃保証」も曲者です。

「家賃保証」とは、一定期間、物件に空室が出ても家賃が家主に支払われる制度です。

一見素晴らしい制度に見えますが、通常、満室賃料の80%から90%を支払うので家主の収入は当然下がります。

その引き換えに毎月の収入が安定する仕組みです。

「家賃保証は、業者が一括で家主から物件を借り上げることから「サブリース」とも呼ばれます。

ここに大きな「落とし穴」があります。

通常「家賃保証=「サブリース契約では、経済状況の変動で賃料水準が変わった時、支払い金額の見直しをします。

また、賃貸需要が著しく減退した場合、家賃保証から業者が手を引くこともあり得ます。

ここでは詳しい説明を避けますが、「家賃保証」によるトラブルは全国的に起こっています。

不動産投資は株式投資や金・FXなどと異なる投資である


不動産投資初心者の中には「株式投資」「REIT(不動産投資信託)」をされている方も多いと思います。

不動産投資との相違点を、最も知名度のある株式投資と比較してみます。

株式投資は投資家が有望と判断した企業の株券を買うことで、その会社へ出資する投資です。

投資した企業が業績を上げれば株価は上昇し、高騰時に売却すれば投資金額の数倍以上の利益を得る事もできます。

その逆に、業績不振で倒産した場合、株式は紙くず同様になるリスクを負います。

投資商品の中で見た場合、株式投資やFXは「ハイリスク・ハイリターン」の投資です。

これに対し不動産投資は、投資用不動産、すなわち賃貸アパート・マンション一棟や、一戸建、マンションの一室、特にワンルームマンションなどの不動産を購入し、賃貸することによって収益を得る投資です。

金への投資と同じ「実物投資」ですが、「金」はそれ自体お金を生みません。不動産は貸すことにより賃料というお金を生み出す点が異なります。

また不動産は基本的に

「なくならない」(永続性)
「動かない」(非移動性)

ものであり、例え全ての部屋から入居者が退去しても「紙屑同様」「タダ同然」にはなりません。

「建物」が老朽化して取り壊す事になろうとも「土地」は無くなりませんし、更地化の有無に関わらず売却できます。

しかし不動産投資は株式投資のような元手の数倍になるような「大儲け」はありません。

不動産投資は保有期間中の賃料収入「インカムゲイン」と、投資期間終了時に売却する時に得られる利益「キャピタルゲイン」の2つからなる投資です。

株式投資と比較した場合「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資だと言えます。

不動産投資にはリスク(予測不能なこと)がいくつもある

投資には必ず「リスク」があります。

ここでいう「リスク」とは、「危険なこと」という意味でなく「リターンの不確実性」を言います。

不動産投資における「リスク」だけでも一回分記事になりますので、簡潔に纏めます。

1 空室リスク・・・投資物件を賃貸に供するため、入居者が退去し、新たな入居者が入らない「空室」のリスクがあります。

2 滞納リスク・・・空室ではくとも、入居者がリストラに遭うなどして賃料未払い(滞納)となるリスクがあります。

3 賃料下落リスク・・・不動産投資は一定期間物件を運用するため、景気変動により賃料水準が下落し、結果として収入(インカム)が減少するリスクがあります。

4 地震・火災などの災害リスク・・・不動産は「なくならない」特性がありますが、例外として地震や火災により物件が滅失・毀損するリスクがあります。

5 金利上昇リスク・・・銀行の貸出金利が上昇すると、ローンで資金を調達している場合、毎月の返済額が増加し、収支計画が崩れるリスクがあります。

6 修繕リスク・・・不動産は「土地」と「建物」の複合体です。「土地」はなくならず、動かない特性がある反面「建物」は新築後、年数を経る毎に経年劣化し、投資期間中に外壁補修など修繕を行うリスクがあります。あらかじめ出費を見込んでおかないと収支計画が崩れます。

7 管理会社倒産リスク・・・主にマンションの場合、管理会社が倒産すると、大規模修繕工事などが行われなくなり、結果として入居者が入らず、賃料減額等によって収支が狂うリスクがあります。

以上、代表的なリスクを上げてみましたが、いずれも「リターンの不確実性」に関することです。

このように、不動産投資には様々な「リスク」があることを知らないと、収支計画が崩れて赤字に転落する可能性があることを絶対に忘れてはなりません。

不動産投資はキャッシュフローを知らなければいけない


不動産投資は株式投資と違い、株の価値=価格の動きを追うのではなく、「お金の流れ」=「収支」である「キャッシュフロー」を理解し、投資計画を立てなければなりません。

「キャッシュフロー」について書いた本や記事を見ると、難解な記述が多いのです。

不動産投資の初心者が理解できないのは当然です。不動産の専門家である私が読んでも難しい文章がかなり多く見られます。

私は簡単に説明します。

キャッシュ(=現金)の「フロー」(=流れ)と分けて言うと何となくわかりませんか?

すなわち「収入」(インカム)と「支出」(アウトプット)を正確に把握し、手元にいくらお金が残るのか?それを常に意識する必要があるわけです。

不動産には様々なリスクがあり、賃料の下落や、滞納者が行方不明となることもあります。すると収入が減り、支出が増えることになるため、「利益」が減ることは皆さんでもわかるでしょう。

こうしたタイムリーな動きばかりではありません。

建物が経年劣化すれば、屋上防止工事、外壁補修工事のほか、ガス湯沸かし器の室外ユニットもおよそ10年から15年前後で交換する必要があります。

こうした修繕に対する備えは、ある程度予測できますので、修繕費用をストックしておくことも不動産投資では必要になってきます。

キャッシュフロー表を見て内容を読み解けるようになれば、業者の提示する表面利回りと想定賃料で作られた「バラ色収支計画」がいかに矛盾しているのか一目でわかりますよ。

不動産投資は期間を定め「出口」を意識し物件購入をする


不動産投資は株式投資と違い、短期の転売で利益を得るのでなく、

一定期間保有し、運用期間中は賃貸収入で利益(インカムゲイン)を得て、建物が老朽化し、

賃料下落、修繕リスクが高まると予測される時期をあらかじめ考えておき、

最後には物件を売却処分する時に得られる利益(キャピタルゲイン)を得る投資です。

「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つ利益があることも覚えて下さい。

「出口」と初めて聞いてもわからないでしょう。

物件を購入するときが「入口」、処分するときを「出口」と呼びます。

不動産投資で大切なことは、投資期間が終了して売却処分するとき「売れない」物件でなく「売れる」物件を選ぶことです。

例えば、戸建住宅ではよくある旗竿型の敷地があります。

業界用語も東西で
「敷延(シキエン)」
「専通(センツウ)」
などと分かれるようですが、接道間口が2m前後で20m、30m程行くと奥が四角い敷地になっているため「旗竿地」とも言います。

共同住宅の場合、東京都の場合は「東京都安全条例」という厳しい建築規制により、

物件により間口を3m以上にする必要がありますが、既に建っている建物の中には間口が2mを切る「再建築不可」の物件がアパートでも存在します。

大体、このパターンですと利回りは高めになっているはずです。

不動産投資に慣れた方であれば、承知の上で安く叩いて購入し、売却時は「ワケ有り物件」専門の買い取り業者へ卸す事を計画するでしょうが、不動産投資初心者には「危ない」方の意味で「リスク」が高すぎます。

長方形の敷地も同様です。

330平米(100坪)の土地だとすれば、余程の高級住宅地でない限り、購入者は建売業者にほぼ限定されます。

彼らは敷地を芸術的に分割し、建物を建て、あるいは建築条件付の売地として転売するため、極端な長方形の敷地だと角地や二方路地でもない限り分割できず、購入してくれない可能性もあります。

このように、投資期間終了後の転売「出口」を意識した「出口戦略」をしっかり考えた物件選びも不動産投資の初心者に知って頂きたい事実です。

不動産投資初心者はリスクとキャッシュフローを知ることが重要です。

「不動産」を知ることがまず必要


いかがでしたか?

不動産に投資するのが不動産投資です。

従って不動産の特徴を知る事から始めて、株式投資とは違う「キャッシュフロー」を把握すること、それを正確に割り出すため「リスク」を知り、最後に得る「キャピタルゲイン」を意識した「出口戦略」を立てられるように多くの物件を見て学んで下さい。

著者:神林勝利
不動産鑑定士_神林さん
不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。